戦略を聞く キューサイ 藤野孝社長

 経営陣による自社株買収(MBO)の一環として、投資会社が実施していたキューサイの株式公開買い付け(TOB)が成立。投資会社は発行済み株式の98%を取得し、キューサイは年明けにも上場廃止となる。今後、非公開企業として、どのような舵(かじ)取りをするのか、藤野孝社長に聞いた。(三好益史)

 ◆販売店組織を強化
なぜMBOなのか。
 「上場したことで、どことなく疑わしいと思われていた健康食品の信頼性を高めることはできた。ただ、大手食品メーカーが参入する中、情報をすべて公開することで、販売動向や原価率までばれるようになった」

 「安定的に成長するには、商品開発や販売手法の改革に取り組まないといけない。失敗もあれば、業績が悪化することもある。株主ばかり気にしていると、思い切ったことができない」

??昨年度、青汁業界首位の座を奪われた。
 「テレビショッピングが主な販売手法になり、限られた時間枠で青汁以外の新商品に力を入れてきた。このため主力の冷凍青汁の売り上げはピーク時から半減した。本業の立て直しが最大の課題だ。商品は他社には負けない」

??テレビショッピング以外の販売手法は。
 「販売店組織を立て直す。25年前に組織化し、他社はまねできない。取次店は全国に約6200店あるが、7年前から半減した。取次店を利益の出る組織にして、さらに増やしたい」

 「販売店組織は実は、時代にマッチしている。家庭に届けて客と顔を合わせ、コミュニケーションをとると、継続率も高くなる。少子高齢化社会で将来、青汁以外の販売を代行する事業もできるかもしれない」

??新商品開発は。
 「今も新商品の開発には力を入れている。例えばひざの痛みを和らげるなど、効果を体感できるような健康食品が作れないか考えている」

??投資会社が親会社になる不安は。
 「業績が悪ければ、責任を取り、リストラもしなければいけないのは今までも同じだ。ただ、1年待ってもらえたのが、半年になるかもしれない。我々のできることは業績を上げることだけだ」

??経営者の出資は。
 「借金してでも出す予定だ。それが株主にも社員に対しても本気でやっているという証しとなる」


読売新聞 - 2006年11月15日