チャングム監督インタビュー(2)「次回作は朝鮮王朝時代が舞台」


『宮廷女官 チャングムの誓い(大長今)』のイ・ビョンフン監督インタビュー第2弾。今回は、「食」「映画」、「日本のドラマ」そして、待望の次回作について話していただきました。
── 好きな韓国料理は?

監督 テンジャンチゲ(みそ鍋)やキムチチゲ(キムチ鍋)です。いっしょに食事するスタッフたちは私が庶民的なものばかり選ぶのでがっかりしています(笑)。みんなは中華や焼肉などのごちそうを食べたいでしょうから。私にかまわず好きなものを食べてくれと言っていますが、やはり気をつかうようですね。

 ふだんは家でも外でもククス(麺)やラーメンをよく食べます。とにかく麺が好きで三食続いてもいいくらい。よく行く店はロケでよく使う昌徳宮(チャンドックン)から近い「秘苑ソン・カルククス」です。私の年代には麺や粉ものが嫌いな人がけっこういますね。韓国が貧しい頃、さんざん食べたものだからでしょう。「大長今テーマパーク」で撮影をしていたときも、近くにあったスジェビ(すいとん)の店に通いました。最初はスタッフみんなで食べていたのですが、だんだんつきあってくれる人が少なくなり、最後は私と麺好きなカメラマン二人だけになってしまいました(笑)。

── お酒は好きですか?

監督 実はあまり飲めません。体質に合わないのですね。ナイトキャップとして果実酒を一杯飲むくらいです。昔、ROTC(学生軍事教育団)に入隊したとき、鉄かぶとに注いだ焼酎を先輩に飲まされ、倒れて運ばれた苦い思い出があります。私が飲めないことを知っているのに、いまだに飲みに誘ってくるのが俳優のイム・ヒョンシク(チャングムのトックおじさん役)です。彼とは30年以上のつきあいで、同年代ということもあり、友だちのような存在ですね。

── 韓国料理の魅力とは?

監督 キムチ、テンジャン(みそ)、カンジャン(醤油)、ジョッカル(塩辛)などの発酵食品が発達していることでしょう。料理の大半が発酵食品で、健康食品であり、長寿食品だと思います。『大長今』に登場した宮廷料理を見ればわかるように、朝鮮半島の料理はかつては淡白で、刺激的ではありませんでした。16世紀末に唐辛子が伝来し、時代を経て今のような味に変わっていったのです。今では韓国料理といえば辛いというイメージが定着していますが、少し残念な気がします。料理だけでなく韓国人の性格、そしてドラマも刺激的なものが目立ちますね。歴史的に困難な状況を多く経験したことが、味や気質、文化などを刺激的なものにしたのかもしれません。

── 思い出に残る料理は何ですか?

監督 娘が作るトッポッキ(ウルチ米のモチを甘辛いタレで炒めたもの)でしょうか。娘の他の料理はそうでもないのですが、トッポッキだけは本当においしいのです。彼女が試験中のときでも、無理に頼んで作ってもらったこともありました。私自身は料理はあまりできません。ラーメンくらいは上手く煮ますけれど(笑)。

── ふだんの食生活で、意識していることは?

監督 3食欠かさないことです。撮影で忙しいときも食事は抜きません。そうしないと体力がもちませんから。それと、薄味で食べることですね。健康のため家内が淡白な味付けにしているので、たまに物足りなく感じるのですが、文句を言わずに食べています。

── 日本で食べた料理で印象に残っているものは?

監督 日本のうどんが好きで、よく食べます。日本の知人は韓国に来るとき、うどんをお土産に持ってきてくれます。おかしな話しですが、日本で食べたうどんで一番まずかったのが高級なうどんで、一番おいしかったのが安いうどんでした。高級なものは汁があっさりし過ぎていたのですが、安いものは味が濃くて口に合ったようです。

── 記憶に残る韓国映画は?

監督 最近では『国境の南側』(アン・パンソク監督、チャ・スンウォン主演)ですね。興行的にはパッとしませんでしたが、よい映画でした。イ・ヨンエさん主演の『春の日は過ぎゆく』(ホ・ジノ監督)もすばらしかった。メッセージ性とストーリー展開がよかったです。

── この監督の映画なら、無条件で観るという人は?

監督 日本の宮崎駿さんです。作品はほとんど観ています。幻想的で人間が持っているあたたかい感性があふれていますね。視覚デザインの仕事をしている息子と一緒に観に行きます。彼も宮崎駿作品に関心が深いです。

── 映画を製作してみたいと思ったことは?

監督 たまにオファーがありますが、視聴者に喜んでもらえるドラマを作るだけでも大変なので、別ジャンルへの挑戦は難しいと思います。

── 記憶に残る日本の作品は?

監督 映画よりドラマをよく観ます。NHKの大河ドラマ、『踊る大捜査線』、『電車男』などは時間があるときによく観ています。大河ドラマでは特に『武田信玄』が印象に残っています。

── 日韓の時代劇にはどんな違いが?

監督 日本は英雄物語的な作品が多い気がします。全般的に重くて悲壮な感じが強いですね。韓国の時代劇は軽妙というか、現代の世相を反映した作品が主流ですね。気楽に観ることができると思います。

── 最後に、次回作の構想は?

監督 まだ本決まりではないのですが、来年の秋頃に放送予定のドラマを準備中です。前作『薯童謠(ソドンヨ)』は百済時代が舞台でしたが、今度は朝鮮王朝時代の王様と庶民の物語が核になりそうです。

イ・ビョンフン 1944年、忠清南道燕岐郡全義面生まれ。ソウル大学及び漢陽大学言論情報大学院修士課程終了。’70年、MBCドラマ局入社。’96年同局テレビドラマ制作局長。現在はキム・チョンハク プロダクションのドラマ製作チーム・プロデューサー。代表作に『潜行御史』(’81年)、『捜査班長』(’81年)、『朝鮮王朝五百年』(’90年)、『許浚』(’00年)、『商道』(’01年)、『大長今』(’03年)、『薯童謠』(’05年)など。’06年「玉冠文化勳章」受賞。


朝日新聞 - 2006年11月16日