高齢者の「電話勧誘」相談急増、6年で3倍に

 電話で商品を売りつける「電話勧誘販売」による苦情相談が、60歳以上のお年寄りに急増している。全国の消費生活センターに寄せられた相談はこの6年間で3倍以上に急増しており、国民生活センターでは「退職して在宅していることが多い60歳以上が狙われている。しつこい電話勧誘は毅然(きぜん)とした態度で断って」と呼びかけている。

 同センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた電話勧誘販売に関する60歳以上の人からの相談は、2005年度に1万6871件に上る。00年度の5298件の3倍以上となり、電話勧誘販売に関する相談全体の約4分の1を占める。

 電話勧誘販売に関する相談件数全体は03年度の10万8751件をピークに減少傾向にあるが、60歳以上の相談件数は増え続けている。

 商品別に苦情相談を見ると、皇室や戦争を題材にした「本」が最多で、続いて「電話関連サービス」「紳士録・名簿」「健康食品」「商品相場」??の順。

 電話勧誘販売による平均契約金額は72万円だが、「商品相場」(670万円)や「株」(310万円)は高額だ。現金で支払った例が82%と最も多い。現金を手元に置いた世代が狙われているようだ。

 ある美術展に自分の作品を出していた60歳代の主婦は、広告代理業者を名乗る者から「先生の作品が一番よかった。一般紙に作品の写真や氏名を掲載しませんか」と電話で勧誘された。「先生」ともちあげられて契約してしまったが、翌日解約を申し出たところ拒否されたという。

 60歳代の無職男性は電話で皇室写真集の購入を勧められた。「いいよ」と断ったつもりだったが、写真集と3万円の請求書が届いたという。

 このほか、広告会社から「新聞に出身校の特集記事を載せる。氏名と経歴を掲載しないか」と電話で誘われた70歳代の無職男性が、1度だけ掲載希望を伝えた。その後、別の広告会社から同様の勧誘をしつこく受けるようになり、納得しないまま広告掲載料8万円を支払った例もあった。

 年齢や趣味、経歴などを事前に調べた上で、高齢者が喜ぶようなセールストークで関心を引きつけ、契約を結ばせていると見られる。

 電話勧誘販売の場合、株や商品相場などを除き、契約書面を受け取ってから8日以内(マルチ商法などは20日以内)ならクーリングオフができる。期間を過ぎていても解約できる場合があるので、早めに最寄りの消費生活センターなどに相談したい。

 国民生活センターは「電話勧誘販売は契約内容の説明が不明確になりやすく、証拠も残りにくい。契約する場合は、冷静に契約内容を確かめて」とアドバイスしている。

読売新聞 - 2007/1/19