健康食品「アガリクス」が抗がん作用の効果


健康食品アガリクスについて、金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座の大野智特任准教授が10月下旬から、公的な研究費を活用して臨床試験を開始します。キノコの一種のアガリクスはがん患者の利用頻度がとても高いのですが、アガリクスががんの予防や治療効果を科学的に証明された報告がこれまでほとんどなく、今回の臨床試験でアガリクスの安全性や抗がん作用の効能が明らかになるのではと期待が寄せられています。臨床試験は、厚生労働省がん研究助成金「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」の一環で、金沢大学附属病院と愛媛県の四国がんセンターとの共同研究で行われます。

臨床試験では、がんと診断され、治療を終えて経過を観察中の患者を対象に、患者を三グループに分け、動物実験などで安全性が確認されている市販のアガリクス製品を1日1包(1.8グラム)から3包、6カ月間摂取し続ける試験です。経過の確認は2カ月ごとに採血し、肝臓や腎臓への副作用および免疫機能や生活状況への影響などを調査します。

今回の臨床試験で人に対するアガリクス製品の安全性が確認できれば、がんへの有効性を調べる次段階の試験へと進んでいくとのことです。日本国内では多くのがん患者がアガリクスやプロポリスといった健康食品を利用しています。厚生労働省研究班が2005年に発表した調査の結果では、健康食品や栄養補助食品のサプリメント、漢方、鍼灸などの補完代替医療を利用しているがん患者は全体の45%に上り、そのうち約60%はアガリクス製品を摂取していたという調査結果が出ています。

医療関係者によりますと、患者の多くは健康食品にがんの進行抑制効果を期待して利用している場合がほとんどですが、臨床データがないため、がんに対する正確な効果などは分からないのが実情です。大野特任准教授は日本国内で初めての臨床試験について「アガリクスの正確な情報が少ない現状で安全性や有効性を確かめることは非常に有意義だ」と話しています。

ちなみにアガリクスはハラタケ科に属するブラジル原産のキノコで、和名はカワリハラタケといいます。現在アガリクスは人工栽培が可能となっています。1980年代にがん抑制作用が動物実験などで報告されてから、人への抗がん効果に期待が寄せられて、キノコの全体や一部を原料にした粉末や顆粒、錠剤などの製品が「抗がん作用がある」「免疫力を高める」などとされて健康食品として販売されているのが実情です。これらの点でしっかりとした裏付けがされれば安心して利用できるようになると思います。

臨床試験に参加する患者約90人を募集しています。
問い合わせは、金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座=076(265)2147=まで。